明日(2014/04/05)小田原城で森下卓九段とツツカナと第3回電王戦第4局が始まる。人類側は勝ち越しに望みをつなぐには一敗もできない状態が続いている。今日は二人(?)の背景について説明しよう。
森下卓九段と言えば、森下システムである。第1図を見てほしい。なんの変哲もないこの局面なのだが、すでに森下システムの術中にハマっている。ポイントは後手の6二銀だ。後手の6二銀が攻めに使うために△7三銀と上がれば、先手は将来的に▲5七銀と上がって守備に、後手の銀が△5三銀と上がって守りに使えば、盤石の攻撃陣作成を行う。相手の攻めと守りの状態を見極めて、自陣の状態を決めるという作戦をシステムのレヴェルまで高めたのが森下システムであり、森下卓であった。現在のところこういった思想は他の戦法には見られない非常に変わった特徴であることも追記したい。
第1図 後手が6二銀を攻めに使うか、守りに使うかを先手は見守っている
ツツカナの方は指し手を紹介しよう。電王戦トーナメント決勝▲ツツカナー△Ponanzaの一戦である。今ツツカナがなんと▲3七の金を▲2六に上がった所である。一見後手の穴熊が固く後手持ちに見えるが、ここでの▲2六金は守りの金を遠ざけるかわりに△2四の角の機能を停止させた手である。こうなってみると後手は△6二金と△2四角の浮き駒の負担が大きく、形勢は容易ではない。現在の固さ偏重主義に意義を唱えるかのような力強い金上がりである。
第2図 やや守りから遠ざかっていた金がさらに遠ざかる力強い一手
明日は両雄がぶつかるわけである。ずばり森下九段は普通に戦ってはなかなか勝つのは難しいと思う。作戦としては入玉を強く意識した矢倉をするのではないかと予想する。第二回電王戦第四局であった塚田九段を彷彿とさせる戦いが見られると思う。入玉を見せられた時、今のコンピュータ、そしてツツカナの真価が見えてくると期待する。