屋敷九段とPonanzaの電王戦最終局が2014/4/12にあった。場所は将棋の総本山、将棋連盟。屋敷九段はどのようなコンピュータ対策をしてきたのだろうか?Ponanzaはどういう序盤展開に持ち込まれるのだろうか?色々な不安が錯綜したが、もはや作者としてはできることはない。Ponanzaを信じよう。
局面は屋敷九段の▲2六歩から始まった。ここからは推測だが、△3四歩なら▲2五歩としてから、Ponanzaにうまいこと振り飛車にさせる。また△8四歩には本譜のように少し変則的ながら、横歩取りにするという変化を想定したと思う(第1図)。
第1図 やや変則的な出だし、屋敷九段はPonanzaの横歩取りに弱点ありと見たのだろうか?
ちなみにTwitter上で将棋の非常に強い有名な方も以下のように言ってたり、第三回電王戦で唯一人間側で勝った豊島七段が勝った戦型も横歩取りなので、コンピュータ対策として横歩取りは有力なのかもしれない。
個人的な雑感ですが、コンピュータ将棋さんは、角換わりと横歩取りの判断が他の戦型と比べてほんの少しだけ苦手なイメージがあります。
豊島七段は何でも指されますが、角換わりや横歩取りも勿論大得意なので、注目です
— itumon (@itumon) March 28, 2014
局面が進んで、第2図屋敷九段は横歩取り青野流を選択しました。Ponanzaに勝てたら100万円企画で、圧倒的にPonanzaは必敗になった将棋も青野流だったので、そこからヒントを得たのかなと予想しました。
第2図 Ponanzaは形は違うが第三局でYSSが指した△6二玉を採用、屋敷九段は青野流
第三図はだんだん緊張が高まってきた局面。後手Ponanzaの△4四歩は先手の飛車を詰ますという指し手。こういった場面の形勢判断は極めて難しいですが、先手は9筋の位をどう見るかがポイントになります。位を取ったのが不急の一手となるか、あるいは後手玉の睨む絶好の拠点となるのか・・・
第3図 Ponanzaが△2六歩〜△4四歩としたので、開戦不可避に。果たしてどちらが良いのか?
飛車交換まで一気に進み、第4図に。細かい変化はあるが、一直線にすすむ本譜、こういった展開は実は人間の方が効率的に局面を読むことができると私は思っており、展開としてはイヤな流れだなと思っていた。屋敷九段はここで▲7四歩と打った。少しだけ変則的な一手だなと私は思ったし、Ponanzaはこの手を見て自分が有利になった(+200点程度)良くなったと言っていた。普通に攻めるなら▲9四歩なのだが、△27歩→▲29歩の交換(先手に歩を使わせて、間接的に端攻めを緩和するという意味)を入れられた後に攻めてみろと言われると屋敷九段は自信がなかったかもしれない。
第4図 第3図から一直線に10数手進んだ局面、あまり変化がなく人間の方が上手に読み進められそうな局面
色々あって局面は第5図、運命の△1六香に。伝え聞いた話ではこの手は異筋の妙着という発言が多いのだが。私個人の感想としてはなんだか苦し紛れだなという感触。第三回電王戦バージョンのPonanzaでは後手+400以上の点数をつけていたと思うのだが、最新のPonanzaに書けるとそこまで評価値がよくなくてせいぜい+150点程度に見える。
第5図 駒をすべて投資して角を詰ます。Ponanzaは自玉の危険度を正しく判断できているのだろうか?
第5図から進んで、すべての駒を使い角を取り、第6図となった。人間からはかなり違和感のある手順が続いており、うまい手順だったのではという話も出てきたのだが、Ponanzaの評価値の遷移を見てきた私としては、これはPonanza側の認識がまずそうだなという印象しかなかった。
第6図 最新のPonanzaにかけると、この局面の評価値はむしろ先手持ちに・・
後手は相当駒得しているのだが、遊び駒も多く、先手の玉を捉えるには微妙に戦力不足。一方先手は遊んでいる駒が非常に少なく駒効率が相当いい状態である。Fail Lowを繰り返す評価値を見ながら、私はだんだん不安になってきた。(続く