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コンピュータとの付き合い方

本記事は以前、私が将棋倶楽部24のコラムで書かせていた内容を若干修正して転載してます。なお転載に関しては日本将棋連盟様から許可を頂いております。

 

■ 将棋とコンピュータ 電王:山本一成

はじめまして皆様、私はPonanzaという将棋プログラムを作成している山本一成と言います。将将棋倶楽部24ではPonanzaは最高Rを2013年の5月に獲得しました。対戦していただいた皆様、ありがとうございます!将棋倶楽部24には色々と縁があり、今回コラムを書く機会をいただきました。最後までお付き合いのほど、よろしくお願いします。

■ Ponanzaと将棋倶楽部24
毎年、コンピュータ将棋選手権が終わった5月中旬に、Ponanzaは将棋倶楽部24に参戦しています。2013年の5月は100名前後の方に戦って頂けました。そのときの棋譜一覧はこちらで公開されています。皆様ももしよければ、見てください。人間同士の闘いとはまた違った側面が見られると思います。

 

■ Ponanzaと私
コンピュータ将棋の世界に飛び込んでもう5年以上になります。その間感じることの一つは将棋界の人々のある種の恐怖である。自分達の聖域を汚す謎の集団コンピュータ。人間という生き物は新しいモノに対して潜在的な恐怖感を抱く生き物である。この問題を解消するにはどうすればいいのか。答えは単純である。プログラマの存在を伝えて、プログラマの情熱を伝えればいいのだ。

■ 私の情熱
「どうしてPonanzaを作っているのですか?」最近よく聞かれます。それに対する答えはものすごく単純で、作っているのがめちゃんこ面白いからです。考えて、考えて、考えて強くする。コレほどエキサイティングなことを他に知りません。私自身、将棋がアマ5段あります。将棋倶楽部24ならR2300くらいです。自分の生涯で2番目に頑張ったことが、自分自身が将棋を強くなることです。我が子のように育てたプログラムにその力を抜かれる、人生のいろんな感情があふれる深い味わいです。

■ コンピュータと社会
Googleが自動運転車を作り、長距離をほぼ無事故で走破したニュースがありました。
社会的な合意が進めば、近い将来ほとんどの車は自動運転になるかもしれません。
そうなった時、社会になにが起こるのでしょうか?すぐわかることはタクシー運転者やトラック運転手という職業の存在が危ういものになるということです。一度公道にコンピュータが出てしまえば、安全性、正確性、稼働率。おそらくすべての点で人間は太刀打ちできなくなるでしょう。では、悪いことばかりなのでしょうか?交通死亡事故は日本だけで毎年4000人以上あります。自動運転になったからといって、死亡事故がなくなるわけではないでしょうが、大きく減らせるのではないでしょうか?それにタクシーの初乗りが200円になるかもしれません。貨物の輸送料が信じられないくらい安くなると予想できませんか?

■ 社会的意義
Ponanzaはただただ楽しいから書いていただけだったのですが、最近では多くの人に取り上げて頂き自分の社会的な意義を考えるようになりました。「将棋プログラムは役に立ちますか?」よく言われる質問です。正直に言えば現状では将棋プログラムは直接なにかに役に立つとは考えていません。ドメイン特化と汎用性は両立し難いものです。自分の今考えている社会的な意義は2つ。
1つは未来に起こるコンピュータと人との摩擦を減らすこと。
それにはともかくコンピュータやプログラムがどういうもので裏では多くに人が情熱を持って努力していることを伝えることがスタートです。
1つは若い世代に情報系に感心を持ってもらうことです。「計算」の持つ力にもっとみんな関心を向けてもらいたいです。
そのためには私はできることは、電王戦を通じて、多くの人にプログラムやコンピュータを知ってもらうことがスタートです。

■ 最後に  
第3回電王戦が2014年、3月から4月にかけて行われ、拙作Ponanzaは屋敷九段と闘う予定です。今後起こること皆様ぜひ、その目で確認して、未来に思いを馳せてください。

■ 追記
最近映画「風立ちぬ」を見ました。ただただ楽しいのを理由に戦闘機作りを頑張る主人公ですが、戦闘機は人を殺すためにあるという原罪が主人公を苦しめます。どこか似た感情を私も思っています。電王戦に関わったすべての人が笑顔になる結末を掴み取りたいです。

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