コンピュータ将棋のよくある誤解(その2)

このブログは電王戦をより楽しんで頂くための一助となればと思い書き始めました。なにか意見などありましたら、twitterで声をかけてください。今日もよくある誤解について解説していきたいと思います。

■ よくある誤解
将棋の名人を倒したら、次は完全解析?

「将棋の名人を倒したら、次は将棋の完全解析ですか?」とよく聞かれます。確かに将棋には答えがあるので完全解析は理論上は可能でです。現実問題として、完全解析はまったく目処が立ってないです。今回はどれくらい難しいか少し考えてみましょう。

仮に将棋が100手以内に先手が必ず勝てるゲームだとしましょう。そうすると完全解析するために必要な局面数は局面あたりの合法手数を80とすると、以下の数になります。

80を50回かけた数= 142724769270595988105828596944949513638274662400000000000000000000000000000000000000000000000000

どうして80を100回かけた数でないかというと、先手が必勝なことを証明するのに、先手が指す手は一手だけでいいからです。具体的には将棋は▲7六歩で先手が必勝なら、▲2六歩とか▲1八香などを調べる必要が無いことと同じです。ちなみに必要な局面数はあまりに大きすぎて、ブログのレイアウトが破壊されてますね(笑)

ここで第三回電王戦でPonanzaが一秒間に読める局面数と比較してみましょう。

Ponanzaが一秒間に読める数

= 7000000

確かにものすごい数なのですが、将棋の巨大さにくらべてあまりにもか弱い存在です。コンピュータ将棋のレベルはプロ棋士レベルまで達しているのは間違いないです。しかし次の目標が将棋の完全解析とするにはあまりに遠すぎます。将棋よりも探索空間がだいぶ小さいと言われているオセロですら完全解析されていないことを考えると、将棋の真理にたどり着くにはまだまだ遠いと言わざる得ないです。

このエントリの最後は、升田幸三実力制第四代名人の言葉で終わりにしたいと思います。この言葉は当時あった3つのタイトル(名人、王将、九段)を史上初めてすべて制覇をした時の彼の言葉です。ご本人は自身への戒めのために仰ったのかもしませんが、私は将棋の雄大さを伝える意味として、掲載させていただきます。

 

たどり来て、未だ山麓 

升田幸三名局集 (名局集シリーズ)

升田幸三名局集 (名局集シリーズ)

 

 

最後に紹介した升田幸三名局集の中にはゴキゲン中飛車や▲7八金型居飛車穴熊の原型も出てきます。新手一生を掲げた、升田幸三名人の創造性がにじみ出ていて、かなりオススメです。