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電王戦第3局 豊島七段とYSSの観戦記

コンピュータ将棋 電王戦 第3回電王戦

3月29日、大阪あべのハルカスで第3回電王戦第3局、豊島七段と将棋プログラムYSSの対戦が行われた。人類側の2連敗で迎えて本局、ここで勝たなければ人類の負け越しが決まってしまう。対局に先立って豊島七段のプレッシャーはいかばかりであっただろうか。早速観戦記を書く前に、少しだけ対局する(?)二人の話をしよう。

豊島七段は序盤中盤終盤と隙のない棋風で知られている。私は何度か豊島七段とお話する機会があったのだが、彼の印象はニコニコ動画のPVなどで受ける印象そのものである。純粋さ、実直さ、そして将棋に対する圧倒的な熱意。未来の名人を予感させるには十分なものであった。プロ棋士間の棋力をイロレーティングで表した結果によると、非公式ながらプロ棋界でも片手に入る実力があるとも言われている。

YSSのプログラマ山下さんについてもお話しよう。山下さんは昔から積極的に情報を発信しており、山下さんが作ったこのサイトは将棋プログラマ必読のものとなっている。 今回の電王戦では山下さんは絶えず気品ある対応をしていたが、本来は面白く、早口で、そしてなにより写真を取るのが大好きな人である。また囲碁プログラム「彩」を作られおり、その強さもトップレベルのものである。

本局は横歩取りに進んだのだが、22手目で大きく将棋が動く。図1は後手YSSが△6二玉と上がった所なのだが、ひと目危険すぎる。▲3三角成△同桂▲2一角がみえるからだ。Ponanzaに探索させると先手が400点程度に上がる。

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第1図 アマチュア高段者ならひと目で危ないとわかる一手だ

 

実はこの△6二玉と上がる将棋は何度かコンピュータ将棋の大事な場面で出たことがある。一つは電王戦トーナメント・決勝の将棋、N4S対YSSの対局である(第2図)これは本局と全く同じ形となっている。

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第2図 豊島七段と同じ手をYSS相手に将棋プログラムN4Sもやっている

 

もう一つは第22回世界コンピュータ将棋選手権、Ponanza対ツツカナ(第3図)、後手の飛車の場所の違いがあるが、ツツカナも△6二玉と上がっている。

f:id:ponanza:20140329204431p:plain第3図 なんとツツカナも同じ手筋を食らっている

 

結論から言えば、本局はここで終わってしまった。コンピュータはこれくらい不利をなんとかしてしまうのだが、相手はあの豊島七段である。しかも豊島七段は事前の研究でこの局面の性質をいやというほど知っているはずだ。YSSに勝ち目はない。プロ棋士で▲3三角成〜▲2一角の手筋を知らない人はいない。それくらい有名な手筋である。一方でコンピュータはそういった手筋を知らない。そこに本局のすべてがあった。

本局は豊島七段がYSSをうまくハメたという評価がつくかもしれない。もちろんそういう側面もあったのだが、前述したN4S対YSS、Ponanza対ツツカナ、2つの試合はいずれも後手の勝ちであったことも特筆すべきことだろう。